目次
西台クリニック院長済陽高穂
検査結果を治療に活かすためにー本書の上手な活用法ー
有楽橋クリニック院長林泰
第1章 検査の基礎知識
検査の種類と進み方
年齢により異なる健診の種類
人間ドック・がん検診とは
検査前日と当日の留意点
検査にかかる料金の目安
保険適用ありと保険適用外の検査
検査結果の「異常なし」とは
第2章血液検査でわかること
赤血球数(RBC)
網状赤血球(網赤血球)
赤血球恒数(MCV/MCH/MCHC)
赤血球沈降速度(ESR)
血色素(ヘモグロビン)量(Hb)
ヘマトクリット(Ht)
血小板数(PIt)
白血球数(WBC)
白血球分画(白血球像/血液像)
血液ガス分析(BGA)
血清総たんぱく(TP)
血清たんぱく分画(PF)
クレアチンキナーゼ(CK/CPK)
脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)
血清フェリチン
血清鉄(Fe)
出血時間
PT(凝固系)プロトロンビン時間(PT-INR)
活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)
フィブリノーゲン(Fib)
AST(GOT)・ALT(GPT)
γ-GTP
乳酸脱水素酵素(LDH)
総ビリルビン(T-Bil)
アルカリフォスファターゼ(ALP)
コリンエステラーゼ(Ch-E)
アンモニア(NH3)
インドシアニン・グリーン(ICG)
ペプシノゲン(PG)
総コレステロール(TC)
LDLコレステロール
HDLコレステロール
中性脂肪(TG/トリグリセライド)
空腹時血糖(BG/BS)
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)
経口ブドウ糖負荷試験(OGTT/GTT)
フルクトサミン/グリコアルブミン(GA)
1,5アンヒドログルシトール(1,5AG)
抗GAD抗体・抗IA-2抗体
血清アミラーゼ(AMY)
アミラーゼアイソザイム
血清エラスターゼ
血清リパーゼ
血清トリプシン
血液尿素窒素(BUN)
尿酸(UA)
血清ナトリウム(Na)
血清クロール(Cl)
血清カリウム(K)
血清カルシウム(Ca)
血清クレアチニン(Cre)
推算糸球体ろ過量(eGFR)
血清リン(P)/血清無機リン(IP)
血清マグネシウム(Mg)
血清亜鉛(Zn)
第3章尿・便検査でわかること
尿たんぱく(U-Pro)
尿糖
尿潜血反応
尿比重
尿沈渣
尿pH
尿ビリルビン/ウロビリノーゲン
便潜血反応
寄生虫・寄生虫卵
第4章アレルギー・免疫・感染症・ホルモン検査でわかること
アレルゲン特異的IgE
リウマトイド因子(RF)
抗CCP抗体
抗核抗体(ANA)
おもな自己抗体
梅毒血清反応(STS/TPHA)
マイコプラズマ抗体
寒冷凝集反応(CA)
インフルエンザ迅速検査
百日咳菌抗体
クラミジア抗原・抗体
ノロウイルス
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)
ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)
A型肝炎ウイルス(HAV)抗体
B型肝炎ウイルス(HBV)抗原検査
C型肝炎ウイルスRNA定量(HCV-RNA定量)
ヘリコバクター・ピロリ抗体
ヘリコバクター・ピロリ菌(尿素呼気試験)
喀痰抗酸菌塗抹
クォンティフェロン(QFT)
甲状腺ホルモン(FT3/FT4)
甲状腺刺激ホルモン(TSH)
抗TSH受容体抗体(TRAb/TSAb)
抗TPO抗体
抗サイログロブリン抗体(TgAb)
免疫活性インスリン(IRI)
Cペプチド(CPR)
第5章画像・生体検査でわかること
PET検査
RI検査(シンチグラフィ検査)
コンピュータ断層撮影検査(CT検査)
磁気共鳴断層撮影検査(MRI検査)
磁気共鳴血管造影検査(MRA検査)
SPECT
脳波検査(EEG)
頭部血管造影検査
頸動脈超音波検査
血圧
心電図検査(安静時/ECG)
負荷心電図検査
ホルター心電図検査(24時間心電図)
冠動脈血管造影検査/冠動脈CT検査
胸部X線検査
上部消化管X線造影検査(胃透視)
上部消化管内視鏡検査(胃カメラ/GIF)
終夜睡眠ポリグラフィー検査(PSG検査)
喀痰細胞診検査
気管支鏡検査(BF)
腹部超音波検査(腹部エコー検査)
腹部血管造影検査
内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)検査
下部消化管X線検査(注腸)
下部消化管内視鏡検査(大腸鏡)
腹腔鏡検査
腎盂尿管造影検査
膀胱鏡検査
骨密度(骨塩定量)検査
関節鏡検査
子宮頸がん細胞診
ヒトパピローマウイルス検査(HPV検査)
膣鏡診・膣拡大鏡(コルポスコープ)診
マンモグラフィー検査
腫瘍マーカー
内容説明
健診&検診受診率の向上を目指してーがん検診のすすめとPET-CT検査の有用性ー
西台クリニック院長 済陽高穂
日本人のがん検診受診率は軒並み5割を切る低さ
2015年の日本人の平均寿命は女性87.05歳、男性80.79歳となり、男女ともに過去最高を更新しています。女性は2012年以来世界1位でしたが、香港に抜かれて2位、男性は前年の3位から4位になってしまいました。とはいえ、日本が世界有数の長寿国であることに間違いはありません。
厚生労働省によれば、「がんや心臓病、肺炎、脳卒中などによる死亡率が改善したことが要因」であり、医療技術の進歩や健康志向の高まりによって、今後も平均寿命は伸びる余地があるとしています。
確かに医療技術の進歩は目覚ましく、長生きができる国民であること自体は喜ぶべきではあります。しかし、実際にいくつまで心身共に元気であり続けることができるか、ここが重要なのです。日本の医療費の推移をみれば、依然として医療費は増え続けるいっぽうです。病気にかかって治療を続けなければいけない事態になる前に各自が予防していく、これこそが超高齢社会を迎えている今の日本人に最も重要なことではないでしょうか。
そのために欠かすことができないのが、定期的な健康診断や人間ドック、各種検診です。すでに思い当たる症状があって外来を訪れ、くわしい検査を受けることもありますが、とくに心当たりがなくても定期的に健康診断を受けることで、思ってもみなかった身体の異常が発見されることがあります。
そのときは一時的にショックを受けることもあるかもしれませんが、私は、早期発見にはメリットしかないと断言できると思っています。早期に発見できれば、治療の開始も早まり、進行を食い止めやすくなります。もちろん、完治の可能性も高まるわけです。
ここで、日本人のがん検診受診率についてお話しましょう。先ほど述べたようにがんによる死亡率は多少の改善傾向にありますが、実際には日本人の2人に1人はがんにかかっているというのが現状です。そして、依然として死亡原因のトップであることに変わりはありません。
この原因のひとつに、がん検診の受診率の低さがあるのではないかと思っています。早期に発見できていれば助かるがんも、進行してから治療したのでは、治癒率も下がるばかりなのです。
次ページの下に記載している40〜69歳のがん検診受診率のグラフをご覧ください。2009年以降は、がん検診率5割を目指す厚生労働省の呼びかけによって、受診率は増加してきているものの、今のところ5割を超えることはありません。ましてや、がん検診受診率が8割にのぼる欧米の高い受診率と比べると、明らかに低いのが現状です。
とくに企業が加入する健康組合などによって励行されているがん検診の受診は増加傾向にありますが、自治体主導の受診率、個人の希望による受診率は低く、発見の遅れにつながっている可能性を否定できないのです。
厚生労働省がすすめる5つのがん検診の内容とは?
「自分は毎年健康診断を受けているから大丈夫」と考えている人も少なくありません。しかし、その健康診断に「がん検診」は含まれていますか?健康診断で異常がみつからなかったといっても、もう一歩踏み込んだ検査が必要になることもあります。
厚生労働省は「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」において、胃がん、子宮頸がん、肺がん、乳がん、大腸がんの5つのがん検診をすすめるように市区町村に通達しています。
●肺がん検診
肺がんは死亡率が最も高いがんで、喫煙習慣が原因のひとつになります。一般的な健康診断では肺のX腺検査のみが実施されることが多いですが、50歳以上で喫煙指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が400ないし600以上の人、もしくは40歳以上で6カ月以内に血けっ痰たんがあった人は、痰を採取して行う喀かく痰たん細胞診を併用することになります。
●胃がん検診
日本人は昔から胃がんによる死亡率が高くなっています。胃がんの検査は、造影剤のバリウムと胃を膨らませる炭酸ガスを発生させる発泡剤を飲んで胃X腺検査を受けるのが主流です。一部の市区町村では、胃X腺検査に代えて胃内視鏡検査を実施しているところもあります。また、最近ではカプセル内視鏡検査ができる医療機関もあります。
●大腸がん検診
大腸がんは毎年10万人以上の人が罹患している罹患率の高いがんです。大腸がん検診は、便べん潜せん血けつ検査用のキットを利用し、自宅で2日分の便を採取して提出するだけの簡単な方法です。この検査を受けて早期にがんを発見できれば、死亡率は60〜80%下がるといわれています。下痢をしやすくなったり、便秘になりやすくなったりと、便の状態がよく変化するなどの心当たりがある人はリスクが高いと心得てください。
●子宮頸けいがん検診
子宮頸がんは20〜30歳代での発症が多く、がん検診の対象年齢がほかのがんと比べて低いことが特徴です。子宮頸部の細胞を採取してがんの有無を調べる子宮頸部細胞診が基本ですが、最近は原因のひとつであるHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染有無を調べる検査が併用されることもあります。自覚症状が出にくいがんであるだけに、検査が非常に重要になってきます。
●乳がん検診
乳がんは閉経前後の40代後半での罹患率が高く、進行が比較的早いのが特徴です。食の欧米化やライフスタイルの変化などが一因となっていると考えられ、この20年で2倍近く増加しています。40歳を過ぎたらマンモグラフィー検査を受けるようにしましょう。乳房をアクリル板で挟んでX線で撮影します。ただし、乳腺が発達している若い人の乳房では、がん細胞を判別しにくいというデメリットがあります。そのため、20〜30歳代の女性には乳房超音波検査がすすめられています。
しかし、現状、40歳以降のマンモグラフィー検査に対する助成しかないため、若い世代で検診率が上がらないという現状があります。
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大腸がん、乳がん、子宮頸がんについては、条件に該当すれば無料で検査を受けられるクーポンが配布される自治体もあります。まだ若いからとか、自分は大丈夫だと過信することなく、きちんと検診を受けてください。それが、健康長寿への確かな一歩になるはずです。
早期発見から治療範囲の決定までがん治療に有効なPET-CT検査
私が院長を務める西台クリニックでは、予防医学の観点からがんの早期診断においてPET-CT検査が非常に有効な診断法であると考えています。体内に隠れているがんを発見するために、CTやMRI検査、超音波検査、血液腫瘍マーカー検査などが生みだされてきましたが、最も画期的なものが、20世紀末にもたらされたPET検査です。
PET検査は小さながん病変を描き出すことができ、早期発見にすぐれているほか、病巣が悪性か良性かの診断、治療が有効かどうかの判定や治療後の再発・転移がないかどうかも調べることができます。
さらに現在ではPETとCTを融合させる検査機器が開発され、これをPET-CT検査といいます。PET(陽電子放射断層撮影法)とCT(コンピューター断層撮影法)が一体化しており、両方の画像を融合する最先端の検査です。PETによる「糖代謝の機能情報」とCTによる「形態情報」を融合した画像で診断します。一度に体幹をスクリーニングすることが可能で「従来の診断機器では捉えきれなかった小さながんの早期発見」「腫瘍の良性悪性を識別」などの有用性が認められています。
これによって、病巣のより詳細な情報が得られ、がんの治療方法、治療範囲を正確に決めることができるわけです。かけがえのない大切な身体が本格的に蝕まれる前に、点検を行っていくことが命を守る重大な選択肢であることを知っていただきたいと思います。